メインテナンスをレベルアップしてみませんか?
生涯QOLを保つために私達ができること

開催日:2012年11月4日(日)
会場:東京医科歯科大学 M&Dタワー2F 大講堂

大会抄録(PDF)はこちら

午前の部

座長 埼玉県比企郡 村上歯科医院 村上智

午前中の前半は東京都の清水智幸先生と静岡県の米山武義先生の2人に御講演して頂いた。清水先生はインプラント治療におけるサクセスレートを向上させるためのメンテナンスについて、臨床例を提示しながら「いかにインプラント周囲軟組織の健康状態を維持するか」について講演し、プロ―ビングの方法など歯科衛生士にも分かりやすい、とても良い内容であった。
2人目の米山先生は歯周病学会専門医でありながら老年歯科医学会理事で、訪問診療や摂食嚥下障害に意欲的に取り組んでおられる先生ですが、訪問診療や摂食嚥下障害においても「歯周基本治療」は大変重要であるという講演だった。超高齢化社会を迎えた中で日々臨床を行う会員にとって、大変有意義な内容であった。

清水智幸先生

米山武義先生

佐藤寛先生

神山剛史先生

佐藤賢次郎先生

会場風景

午前中の後半は会員発表で、山形県の佐藤寛先生、埼玉県の神山剛史先生、千葉県の佐藤賢次郎先生の3人に発表して頂いた。佐藤先生は「メンテナスに勝る治療なし」との演題で、20年以上にもわたり良好なメンテンスの症例を提示した。神山先生は「私の目指すメンテナンス」との演題で、炎症と力のコントロールを考慮した症例を提示した。佐藤先生は十分なプラークコントロールが得られず外科処置が施せない患者を、非外科的処置でメンテナンス続けた症例について、データを提示しながらその結果と考察を発表した。

前半の講演の先生も後半の会員発表の先生も、内容は興味深く有意義な講演であった。さぞかし、会員の歯科医師も歯科衛生士も明日からの臨床の糧になり、やる気を鼓舞されたであろうと思う。

 

午前の部

座長 神奈川県川崎市 花村歯科医院 花村裕之

午後の部は、まず3題の会員発表から行われた。1番目は有賀庸泰先生(東京都有賀歯科クリニック)の「私の考えるメインテナンスケア」という演題で、先生が日頃実践されているメインテナンスケアの方法について、症例を通して発表された。患者さんの背景にある価値観や健康観、性格や身体の状態などについてよく分析し、歯科に関する健康行動を啓発するようなアプローチ法を取り入れることが、メインテナンス治療を受け入れてもらう上でとても大切であるという内容であった。

2番目は、歯科衛生士の溝口敦美さん(名古屋市清水歯科勤務)による「先輩から引き継ぐメインテナンス」という演題で、引き継ぐ際の記録の重要性や、臨床での患者指導を通して得られた自分自身の成長や患者さんと一緒にメインテナンスに取り組んでいく楽しさなどについて発表された。担当交代の際の後任者ならではのジレンマや、逆に患者さんから励まされた喜びなど、様々なことが仕事のやりがいになって行ったとのことである。

3番目は東條貴代美さん(厚木市小林歯科医院勤務)による「前歯部審美領域におけるホームケアとプロケアの必要性(臼歯部との比較)」という演題で、定期的なプロケアと良好なホームケアの維持という双方の両立が重要なこと、特に前歯部では歯間乳頭の維持のために注意深いプロケアが必要であるということについて、治療からメインテナンスまでの流れにおける歯科衛生士の果たす役割に関して発表があった。

有賀庸泰先生

溝口敦美さん

東條貴代美さん

清水雅雪先生

会場の様子

花村裕之先生

会員発表の後は、名古屋市の清水雅雪先生による「20年以上の長期経過からみたメインテナンスの問題」という演題で、メインテナンス時に起こる様々な問題点とその対応について、先生の豊かな症例から考察された内容となった。また来年には先生の新しい著書も上梓されるということなので、とても期待されるところである。
最後に今回の大会実行委員の一人である吉田秀人先生から、生活歯の破折に関する考察を通して、今回のテーマである「メインテナンスのレベルアップ」ということのまとめがあり、午後の講演はすべて終了した。

今大会が、長い道程のメインテナンスで遭遇する諸問題解決の糸口になることを願う。最後に小林和一会長の挨拶で本大会は締めくくられた。