午前の部
「治癒の病理~歯周治療再評価のために~」下野正基名誉教授
「歯周基本治療の効果」Dr長濱優、DH大川翔子
「患者さんのための再評価」Dr矢吹義秀、DH藤本夕香利
2018年10月28日、爽やかな秋晴れのもと、第35回日本臨床歯周療法集談会(JCPG)学術大会が開催されました。今回でEpisodeⅤに突入した「歯を残せる歯科医院を目指す!」“再評価から何を見て、どう考えるのか”をメインテーマに多くの歯科医師、歯科衛生士が参加し、演者の先生方が日頃どのように再評価を行っているのかを学びました。
はじめにオープニングムービーが流れ、午前の部がスタートしました。下野正基先生による、歯周組織が歯周病になった時どのような状態なのか、また歯周治療によりどのように組織が変化しいくのかをご講演して頂きました。歯周基本治療をしていく上でより具体的なイメージを持つことが出来ました。また最後に「歯周治療のみならず、口腔ケアの成否は歯科衛生士の肩にかかっている」との言葉もあり、大会に参加していた多くの歯科衛生士が日頃の口腔ケアへのモチベーションが上がったことと思われます。
続いて塩浦有紀先生と鷹岡竜一先生をコメンテーターに迎え、長濱優先生と大川翔子先生のご講演、矢吹義秀先生と藤本夕香利先生によるご講演がありました。
長濱先生は、どこまで患歯周病が治るか、どこまで歯肉がひきしまるかのイメージを新人歯科衛生士にわかってもらうための日頃の工夫をお話されており、そのために反応の良い、治りやすい患者を最初に担当してもらうことなど、とても具体的な話がありました。
矢吹先生は患者に協力してもらうための様々な工夫を講演されており、歯周基本検査を数字ではなく図にして説明することや、診療が進んだ段階で再度主訴を伺い、その都度治療計画を見直すなど、こちらもとても具体的なお話で、明日の診療から取り込んでいけるお話ばかりでした。
午後の部
「再評価から見えてくるもの~歯周基本治療の分岐点~」DH塩浦有紀
「『再評価』で見える歯周病患者の未来」Dr鷹岡竜一
午後の部は塩浦有紀先生によるご講演から始まり、勤務されている熊谷医院での再評価についてご講演して頂きました。まず患者さんに再評価を行うことを宣言し歯周基本治療を始め、初診時から再評価を予測し対応するという話から始まりました。また患者にイメージを明確に持ってもらうために、診断名をはっきりと伝え患者の頭の中に残る話をするとのことでした。また再評価の結果を患者に伝える前に、歯科医師と歯科衛生士で改善点と問題を挙げ、議論し、伝える内容を絞って要点を伝えるという医院の方針をお話頂きました。最後は患者を自立させ安定した健康状態を患者自身で維持してもらうこと、そのために行われる再評価は「健康へのストーリー」という言葉で締めくくられました。
続いての講演は鷹岡竜一先生の「再評価というテーマは難しい」という言葉から始まりました。再評価するためには資料の規格性が大事というお言葉通りの、規格性のある資料の数々を提示して頂き、1つ1つの綺麗な資料に感銘を受けました。「個体の質を推測し、患者の希望、価値観、性格、環境など様々な要因を統合、確認し患者の治療のタイミングを見定めること」、「臨床は再評価を繰り返し個体の本質をみる」など日頃先生が考えていることを教えて頂き、多くの先生が参考にされたことと思います。
再評価について具体的な話から多くの学びを得た一方で、再評価の重要性と難しさを、様々な角度から考えさせられた1日でした。日々当たり前の様に行われている歯周基本治療ですが、歯科衛生士だけが、歯科医師だけが努力しても、歯周病は改善していきません。歯科医師、歯科衛生士それぞれが共通認識をもち、医院全体として同じ目標に向かって取り組むことが重要だと再認識しました。
報告者 埼玉県川口市 かめだ歯科医院勤務 西林 諒