午前の部 「糖尿病やアルツハイマー病が嫌なら歯を磨きなさい」 西田 亘先生

2021年10月24日、爽やかな秋晴れの中、1年越しに第37・38回日本臨床歯周療法集談会(JCPG)学術大会が開催されました。今年のテーマは“歯を残すための総合力をつける!口腔を診る、全身を知る、人を観る(前編)”です。残念ながら近年のコロナ渦の影響により皆さんで直接顔を合わせることはできず、初めてのWEBでのLIVE配信となりましたが、非常に有意義な時間を過ごすことができました。

まず、小林和一会長の「日々楽しく学び、楽しく診療しよう」という開会の挨拶とともに午前の部がスタートしました。

西田先生には「糖尿病やアルツハイマー病が嫌なら歯を磨きなさい」というテーマにてご講演頂きました。非常にユニークな表現を交えながら、WEBなのにまさに目の前で聴いているかのような臨場感でお話され、すぐに西田先生の世界に引き込まれていきました。

まず、糖尿病内科からの観点での歯周治療の重要性についお話いただきました。二型糖尿病患者さんに対しての血糖コントロールにおいて歯周治療が推奨されており、糖尿病界と歯科界で連携をとる必要があると強く訴えられておりました。昨今ではチーム医療というトピックが重要視されておりますが、全身疾患を持っている患者さんに対して医科と歯科連携しチームとして診ていく必要性を今一度再認識させていただきました。口腔内の炎症を取り除くことで全身的に炎症状態が改善するというお話もありましたが、我々も口腔内だけでなく患者さんの全身を治すことを目標に日々臨床に取り組んでいくべきであると感じることができました。

また、アルツハイマー病と歯周治療についてもお話しいただきました。Pg菌が分泌する蛋白質分解酵素ジンジパインがアルツハイマー病患者の海馬に同定され、またアルツハイマー病患者さんの唾液と脳脊髄液にはPg菌が存在するというお話をお聞きし、自分の知識不足もありますが衝撃を受けました。歯周治療を行うことで少なくともアルツハイマー病のリスクを下げることができると考えれば、長期的にメインテナンスに通っていただけるよう患者さんと信頼関係を築くことも我々歯科医療従事者の務めでもあると思います。

今回の西田先生のお話はまさに今年のテーマである“歯を残すための総合力をつける!口腔を診る、全身を知る、人を観る(前編)”を考えさせられる内容でした。日常臨床においての考え方や物の見方が変わった方も少なくないのではないでしょうか。私自身も今回学ばせていただいたことを明日からの臨床活かし、来年の“歯を残すための総合力をつける!口腔を診る、全身を知る、人を観る(後編)”をまた違った視点で楽しめるよう精進していきたいと思います。

報告者 神奈川県厚木市小林歯科医院勤務 上岡幸大

 

午後の部 「視点が変わると処置も変わる〜臨床的な咬合力の捉え方〜」 松島 正和先生

COVID-19が猛威を振るい始めて約2年、2021年10月24日に第37・38回日本臨床歯周療法集談会(JCPG)学術大会が「歯を残すための総合力をつける!口腔を診る、全身を知る、人を観る」(前編)というテーマのもと、初めてWEB(Live配信)開催された。配信が始まる5分前に起きて、家にいながらPCを繋ぐだけで参加できてしまう。なんて便利な時代に生きているのだろうと感じる瞬間である。

Live配信、午後の部は松島 正和先生(東京都開業)による講演が「視点が変わると処置が変わる!〜臨床的な咬合力の捉え方〜」というタイトルで、口腔内に発現する咬合力の話を中心に、基本的な内容から臨床的な内容まで、歯科関係者の誰が聞いてもとても分かりやすい内容で行われた。

まず、冒頭部分では歯の喪失理由について厚生労働省のデータによると、歯周病、う蝕が約70%を占めているが、メインテナンス中に限っては破折を理由に喪失する割合が、約60%と圧倒的に多いことを示し、いかに力のコントロールが大切かを論じた。

次に下顎運動を垂直、水平的な動きに分け、咬合の基礎となる咬合接触点(ABCコンタクト、トリポリズム)、対向関係(1歯対1歯、1歯対2歯)、咬合様式(犬歯誘導、グループファンクション)や平衡側離開が何故大切なのかを、筋肉や歯牙の構造を交えて説明した。

更に、臨床の写真や動画を提示しながら、過度な力の患者特有の歯牙、軟組織や顔貌の特徴、力や歯列によるクラックからの感染、咬合紙や触診で咬合を診る方法等、松島先生ならではの分かりやすい造語も用いて解説した。

まとめに、咬合の分野はとても複雑だが、「歯、歯列」「顎関節」「咀嚼筋」「脳、中枢」の形態、構造、機能を1つ1つ熟知し、それらを複合的に考えることが大事。それに加え、人生100年時代の現代では時間軸も重要なファクターであり、その時は一見問題なさそうな口腔内でも、どこかに歪みが生じ続け、健全にみえていた口腔内が数年後、数十年後には健全ではなくなる可能性がある。口腔を診て(形態、構造、機能)、人を観る(時間軸)ことにより、臨床の幅が広がると締めくくった。

咬合から生じる問題には日々悩まされ続けている歯科医師、歯科衛生士は非常に多いのではないだろうか。今回の講演では明日の臨床から、診る(観る)視野が広くなり、力によるトラブルを早期に発見し、未然に解決する為のヒントが多かった。残念ながら家で一人で聴講してしまったが、できればクリニックの衛生士達と時間を共有したい内容であった。勿論、振り返り配信があることを伝えたので、聴講してくれたはず。。。後編に続く来年の第39回学術大会は是非会場で共有したい。

報告者 東京都立川市 ながさか歯科クリニック勤務 北條幹武

 

オンデマンド配信

デンタルインタビューが開く倖せの歯科外来〜「感謝と賞賛」から始めよう!〜 西田 亘先生

2021年10月24日、コロナ禍の中オンラインでという初めて尽くしで第37、38回日本歯周療法集談会学術大会(JCPG)が開催されました。

オンラインでの開催でしたが「口腔を診る、全身を知る、人を観る」をメインテーマに多数の歯科医師、歯科衛生士の方々が参加しLiveにて1日学び、オンラインの中でも活発なディスカッションが行われました。

それに加えオンデマンド配信もあり非常に有意義な学術大会になりました。

そのなかで西田先生によるオンデマンド配信での御講演「デンタルインタビューが開く幸せの歯科外来」を拝聴し、私はOSCE医療面接の試験を受けた世代でありましたが、学生の時期では深く考えず受けており、今こうして西田先生のお話を聞き、改めて面接ではなくデンタルインタビューとして患者さんと関わっていく重要性を認識しました。

面接のように話していないか、相手に緊張感を与えていないかと自問し、自分がどんなに技術を持っていても患者さんに来ていただき、通っていただかないと意味がないことに気づき、目の前の患者さんに一生涯

寄り添い関わっていき病院に来ていただけるようにと強く感じました。

内科医の立場から西田先生の熱い気持ちと真心ある、お話を聞いていき、自分自身だけでなく、みんなで幸せになり、全てのことに感謝をし、このコロナ渦でも病院に定期的に時間を取り通院してくださる患者さんに敬意と感謝の念が溢れてきました。

今回の御講演を聞き、今ある自分は全て患者さんあっての自分、幸せとは日々前向きに感謝をすることを再度認識させていただきました。

患者さんにとってより良い治療をしていき、口腔を診る、全身を知る、人を観ると言う思いを胸に、日々の臨床に生かし患者さんを幸せにしていきたいと強く決意いたしました。

報告者 神奈川県相模原市 内田歯科医院 院長 内田祐輔

 

明日から実践!よくわかる咬合と顎関節症の基本 松島 正和先生

2021年10月24日爽やかな秋晴れの中、第37回38回日本臨床歯周療法集談会(JCPG)学術大会が開催されました。昨年は新型コロナウイルスの影響により中止、そして今年はJCPG初めてのweb開催となりました。久保木寛朗実行委員長のもと『歯を残すための総合力をつける!口腔を診る、全身を知る、人を観る(前編)』をテーマに歯周炎のリスクファクターとなる糖尿病、歯の喪失のリスクファクターとなる力について学ぶ有意義な一日となりました。

そしてJCPG会員特典として会員限定のオンデマンド配信が用意されており西田先生、松島先生それぞれのご講演を拝聴しました。特に松島先生は『明日から実践!よくわかる咬合と顎関節症の基本』と題してご講演頂きました。40分の短いご講演の中で複雑な顎関節症についてシェーマ、動画を多数用いて歯科医師だけでなく歯科衛生士、スタッフ、誰が聴いてもわかるような内容にまとめられていました。

まず顎関節症の症型分類を日常臨床で使いこなせるようにするために、また顎関節症の治療時に必要な基本事項として、患者さん個人の状態分析を見極めることがポイントであり、正常像と比較し関節円板が薄くなっていないか、転移していないか、骨に異常はないか、細かく分析する必要があり、この分析ができていないと的確な治療が出来ないとおっしゃられていました。そして、顎関節の機能を理解するには、顎関節の構造と形態を熟知することが大事であり、それは人体の構造には全て合理的な理由があるとのことでした。また松島先生は、機能的咬合系をとらえる際に歯列・筋・顎関節・中枢をバラバラに考えるのではなく、複合組織としてイメージし、それぞれの形態・構成・機能を熟知するようにしているようです。次に顎関節の構造と機能を大雑把に・筋(動かすもの)・顎関節(動くもの)・靭帯(止めるもの)と考えると分かり易いと説明され、顎関節のアニメーションと動画を用いて実際にどの様に動き機能しているのかを教えて頂きました。臨床において一番頻度の高いものは顎関節症分類のⅢb型であり、関節円板に唯一くっついている外側翼突筋に引っ張られるからである。Ⅲb型の中でも・急性期・陳旧初期(造語)・陳旧期と分けて考えて対応することが重要であり、特に陳旧期においては正常と同じように開口してしまうため注意が必要であるとお話してくださいました。最後に顎関節症の臨床において触診し、何が起きているかを理屈で理解し、形態・構造・機能をイメージする思考能力を養うことが大切であるとまとめて下さいました。

今回松島先生のご講演を聴き顎関節がどの様に動きどのように機能しているかイメージを固めることが出来た方も多いのではないかと思います。明日からの日常臨床において、まず顎関節症がどの分類に位置しどのくらい経っているのかをよく分析し、徒手的整復術を行う際には外側翼突筋の走行が前内方であることを意識するように、今回学べたこと活かしていきたと思います。今回も多くの方にとって実りのある学術大会になったのではないでしょうか。来年度はどの様な形式で開催されるか分かりませんが、JCPGを通して様々な角度からの活発なディスカッションが行われることを楽しみしています。

報告者 東京都世田谷区小林歯科医院勤務 松野 剛尚