午前の部

「患者さんに磨く自覚をもたせるには」清水雅雪先生
「新人は100%磨きから学ぶ」小笠原夢さん
「歯周治療しても治らないのはどうして」池田恵美さん
「患者さんと一緒に取り組む初期治療」瀬口真由さん

爽やかな秋晴れの中、今年も日本臨床歯周療法集談会(JCPG)第34回学術大会が東京医科歯科大学M&Dホールにて開催されました。歯科医師と歯科衛生士が共に学べる数少ない学術大会であり、今年も歯科医院単位での参加者が多く見受けられました。

谷本亨実行委員長のもと、『歯を残せる歯科医院を目指す!EpisodeⅣ 長期症例から見えてきた歯周基本治療の威力』 というテーマで愛知県名古屋市ご開業の清水雅雪先生と富山県高岡市ご開業の牧野明先生をお呼びし、歯周基本治療にどっぷりと浸かった一日となりました。

はじめにオープニングムービーが流れ、午前の講演がスタートしました。午前中は、清水雅雪先生によるご講演の後に清水歯科医院にご勤務の歯科衛生士である小笠原夢さん、池田恵美さん、瀬口真由さんによる発表、討論を辰巳順一先生と野村正子先生をコメンテーターとしてお迎えして行われました。

清水先生には、「歯周病の約85%は歯周基本治療で改善する」ということから始まり実際に清水歯科医院で行われている患者のモチベーションの上げ方、縁下スケーリングに入るタイミングや根分岐部病変などのお話をいただきました。歯周病の原因はあくまで細菌であり、この原因を除去するためのプラークコントロールをいかにして徹底させるか。これが歯周治療の最も大切なことだと再確認させていただきました。

3人の歯科衛生士からは症例発表を行っていただき、それぞれに関するディスカッションがなされました。

小笠原さんは、まずは自分の歯の100%磨きを達成することによりプラークコントロールの難しさを実感されたそうです。その経験を生かし、プラークの付着状況から工夫を凝らしてそれぞれの患者にあったブラッシング指導を行っておられました。

また池田さんには、高齢者に対して歯周治療を行ったケースを提示していただきました。患者の「治したい」という気持ちを汲み取り、高齢だからと言い訳せず、しっかりと歯周基本治療を行い歯周病を改善させておりました。

最後に瀬口さんに提示していただいたのは、自分の口腔内の現状を受け入れたくない、と来院されたケースでした。患者の不安を和らげ、かつ自分の口腔内の現状を理解していただき、時間はかかったものの歯周病はかなり改善していました。口腔内を見て問題点を発見し、患者さんとこれを解決していくのはもちろんですが、患者さんは今どこにモチベーションがあるのか、どんなことを考え、悩んでいるのかといったことも読み取り、診療に生かしておられました。

全体を通して、症例の歯肉の綺麗さには感動を覚えるほどでした。歯周基本治療の大切さ、そしてその効果の絶大さに気付かせていただきました。私自身も歯周基本治療により一層力を入れ、明日からの臨床に生かしていきたいです。

報告者 埼玉県川口市 かめだ歯科医院勤務 飯田雄太

午後の部

「質の高い歯周基本治療と経過観察」牧野明先生
「歯周基本治療・歯科衛生士の役割」畔川澄枝先生

2017年11月12日、爽やかな秋晴れのもと、第34回日本臨床歯周療法集談会(JCPG)学術大会が開催されました。「歯を残せる歯科医院を目指す!」“長期症例から見えてきた歯周基本治療の威力”をテーマにたくさんの歯科医師、歯科衛生士が参加し、一日まるごと歯周基本治療について学び、活発なディスカッションが行われました。

午前の清水雅雪先生、小笠原夢先生、池田恵美先生、瀬口真由先生のご講演の後、午後の部では牧野明先生、畔川澄枝先生のご講演が行われました。私からは午後の講演について報告させていただきます。

講演では質の高い歯周基本治療のための規格性のある資料収集の仕方から始まり、歯肉の状態によるSRPの開始時期の判断、効果的なSRP、ブラッシングの手技、長い上皮性の付着による長期にわたる安定、等を非常に多くの症例を交えてお話してくださいました。講演後の質疑応答においても多くの症例を提供してくださり、とてもわかりやすく、ディスカッションも大いに盛り上がりました。

「濡れた歯肉」から「乾いた歯肉」に変わった時がSRPの開始時期という、言葉だけではなかなか理解できなかったことも、講演が進むにつれ、膨大な症例写真のおかげで視覚的に理解することができるようになりました。

また、レントゲン所見等では保存不可能と思われるような歯においても的確な診断のもと歯周基本治療にて長期的な安定を得ている症例を見たときには良い意味で大きなショックを受けました。

TBIを行ったから次はSRP、と流れで歯周基本治療を行うのではなく、歯肉の状態でSRPを開始する時期を判断する、歯肉の状態が改善されるまではSRPに進まないという妥協無き歯周基本治療が数々の長期的な安定した予後を生み出しているのだと感じました。

実行委員長である谷本亨先生が述べられていた通り、「基本」イコール「簡単」ということではないのだと痛感したご講演でした。

医療の世界は日進月歩であり、日々新しい治療法や手技、道具が生まれています。得てしてアドバンスなことばかりに目が向きがちですが、基本を忠実に妥協なく行うことが大切だと思います。そのことを歯科医師、歯科衛生士が再確認し、歯科医院として一本でも多くの歯を残そうという共通認識を強く確かめ合うことができた一日でした。歯科衛生士の参加が非常に多いJCPG学術大会だからこそ医院単位で意識を改革していくことができるのではないでしょうか。

報告者 東京都昭島市 関歯科診療所 安達隆帆

ポスター発表